9日 カティーナ

 

Novel

 雑踏の下、群衆の内にカティーナは立っていた。人の群れが目障りで雑音が耳障り。情報量の多さがカティーナにとっては不快だった。確かこの都市の名前は——トウ……なんとかって名前だったはず。どうせそのうち壊す世界だ。それだけの興味しかない。そんな彼女が都市の中心に立ち続けている理由は弟であるカイと待ち合わせていたからだ。まだ彼女が到着してから数分しか経っていないが、何度ため息を吐いたかわからない。
「カイってば、こんな人混みで待たせるんて……」
 人は嫌い。非力で傲慢でその実何も考えていないから。
 でもそれ以上に神が嫌い。力の使い方もわからず責任感も持たないまま、いたずらに世界を創り続けるから。だから彼女は魔女になってしまった。神の与えた力を振るい、世界を壊す魔女に。
 あまりにも暇なカティーナは周囲のモブと同じように端末を弄り始めた。時刻は約束の十分前。またため息を吐いた。姉を待たせるなんて全く不出来な弟だこと。
 この端末の操作方法も弟に教えられたが、時間の確認と—それも腕時計があれば十分だと思っている—あとはカイとの連絡手段として使用しているにすぎない。それ以上のことはよくわからなかったし、理解する必要を感じなかった。
 端末機器を始めに、この世界の文明レベルは自分が生まれた世界とは全く異なっている。今身に付けている衣服も人形が着ていたものをそのまま真似たものだ。いつもの魔女としての服装だと目立つとカイに青い顔で止められたから仕方無く従っている。
「……この世界は面倒臭いわね」
 さっさと壊してしまいたい。カティーナは三度ため息を吐いた。