12日 魔物が騒がしい日(moc)
Novel
今日は魔物が騒がしい一日だった。月に一度訪れる魔物にとっての“そういう”時期なのだ。 魔物たちが街にまで危害を及ぼさないようにと、破格の値段で討伐の依頼を受けたシオンたちだが、予想以上の数の魔物を相手に昼から夕暮れまで戦い続けることになってしまった。
その成果もあってか、あれだけ多かった多種多様な魔物たちもあとは数えるほどしかいない。ようやく宿に帰れると、疲れ切っていた一行は安堵していた。
「きゃっ」
しかしそれは油断だったのだろう。普段ならなんてことのない小さな魔物の攻撃に躓いて、カラーは足をもつれさせてしまう。自身を襲うであろう衝撃に備えようと受け身の態勢を取るが……その必要はなかった。
「——大丈夫か」
シオンの凛々しい声。逆光で表情は窺えないが、きっと誰よりも雄々しくあるのだろう。今日のシオンは—魔物たちに引けを取らないほどに—活力で満ちていた。
そのせいかだろうか。幼い自分の体躯に比べ一回り以上大きな腕に包まれて、カラーの思考は置いてけぼりのまま鼓動はどんどん高まっていく。
「は、はい……ありがとうございますシオン」
「あともう少し、がんばろうな」
彼はいつものように穏やかに笑い掛けた。