11日 フレール兄弟(Farbuer)
Novel
窓から月光が射し込む時間。双子は夜会を開いていた——パジャマパーティという名の夜会を。
「……この服、レディースじゃないか?」
「僕たちのサイズがあるのに?」
もこもことした肌触りの良い生地に淡い色合いが可愛いパジャマを身につけて、双子はくつろいでいた。堂々とソファに座るアイトに対して、セイヴィアは羞恥からか布団を被って身体を隠しているが。
何故パジャマパーティなんてものをしているかと言えば、上司であるアルカからのプレゼントが原因だった。珍しく休日が被り、一日一緒にいようとアイトに乞われれば、セイヴィアに断るという選択肢はない。そんな双子ちゃんにプレゼント、と渡されたものが今着ているパジャマだった。
アルカから貰ったこの衣服はアイトの言葉通りユニセックスなものかもしれないが、頭にあるリボンの形をしたヘアバンドはやはり女性向けのようにセイヴィアは感じてしまう。
例えばアルカやアルバートが着ていれば可愛いと思うが……十九歳の男が着るには些かファンシーすぎる。
「……似合ってない?」
それでもアイトには似合っていると感じてしまうのは兄の欲目だろうか。身長や体格はほぼ同じ双子の兄弟だが、顔立ちはあまり似ていないとセイヴィアは思っている。
しかし——いやだからこそアイトがどれだけ可愛く着こなそうと、俺は決しては自分を可愛いとは思っていない。師匠に誓ってもいい。セイヴィアは単独任務に出ているカーティスに想いを馳せた。
「いや可愛い、けど……俺は微妙かなって……」
「兄さんも似合ってるけど?」
アイトの感想もまた、弟としての欲目だろう。アイトはどんなセイヴィアも肯定するし、セイヴィアもまたアイトのお願いには逆らえない。どうしようもない兄弟だという自覚がセイヴィアにはあったが、今はただ顔を引きつらせることしかできなかった。本当に弟に甘い兄だ。
「他所では着ないようにしろよ」
「パジャマパーティなんて兄さんかアルバートとしかしないよ」
「じゃあ今度はアルバートも誘うか」
二人の夜はまだ始まったばかり。