30日目 Happy Birthday calla(moc)
Novel
「カラー、ハッピーバースデー!」
少女の頭上に紙吹雪が舞う。本日の主役であるカラー・フリージアは、満面の笑みでそれを受け止めた。
「みなさんありがとうございます!」
「カラーは落ち着いた色の服も似合うね〜!」
「ああ似合ってるな」
彼女の纏っている真紅のワンピースは、ベルガモットとジニアが選んで贈ったものだ。特にベルガモットのはりきり様は凄まじかったと、買い物に付き合ったジニアは語る。二人とも、彼女の服がシオンへのプレゼントと似た色合いであることは、口にはしないけれど。
「それにしても、ライラックがシューズをプレゼントしたのは意外だったな」
「折角ですので、皆様に合わせようかと思いまして」
「ライもありがとうございます」
跪いて靴を贈っていた光景は本当に執事のようで、他の三人は内心胸を高まらせていた。靴のサイズがピッタリなのも、普段から彼女の身支度を手伝っているからだろうか。
一歩引いたところで賑わいを眺めていたシオンに、主役のカラーが近付く。
「シオンもありがとうございます。このリボンブローチ」
胸元で揺れる大きなリボンと太陽の様に光るブローチは、シオンが贈ったものだった。他の三人に比べたら小さなものだけれど、彼が一生懸命選んだそれに、カラーは慈しむ様に見つめる。
しばらくして、何かを決意した様に真っ直ぐ、その瞳はシオンに向けられた。
「シオン、お願いを聞いていただけますか?」
「どうしたんだ? 改まって……」
「一緒にお出かけしてほしいんです」
お互いに、誕生日に頂いた服を着て。今日という日を忘れないように。
「それってとっても素敵なことだと思うんです」
彼女の言葉を、昔、どこかで聞いたような気がした。
「……ああ、出掛けよう」
シオンの返事を聞いたカラーは、太陽のように眩しい笑顔を彼に向けた。
「約束ですよ」