23日 機会人形(moc)
Novel
誰もが寝静まった深夜、ライラックは未だ稼動していた。彼の機体は一時的にスリープモードに入ることはあれど、それが夜だと決まっているわけではない。機械人形に人のサイクルなど当てはまらないのだ。ライラックは己の機体や銃を整備して、朝が来るまでカラーの目覚めを待ち続ける。それが彼にとっての日課のようなものだった。
整備のために左手の手袋を外せば、黒鉄の手が常夜灯に照らされる。ライラックは己の冷たいてのひらで、親愛なる少女の安眠を願った。神なんて信じておらず、神も自分を生命と認めてなどいないだろうけど。この身はカラー——フリージア家に捧げると主人に誓ったのだ。だからこれは、神への祈りなどではない。ただ、今は遠き主人へ想いを馳せている。それだけだ。
「おやすみなさい。カラー・フリージア」