21日 視線(moc)

 

Novel

 シオンとカラーが並んで歩くと、兄妹のようだと言われる時がある。
 それは両者にとってはとても複雑な心境だった。シオンには実の妹がいて、カラーは実の家族のことなど覚えていないのだ。本当の家族に申し訳が立たない。
 第一に二人は髪の色も瞳の色も異なるというのに、近親に間違えられることが不思議でならない。聞けば大抵の者はカンだと答えた。
 第二に二人は六つ歳が離れているし、カラーは年齢に比べて成長がやや遅れている。そんな少女と珍しい容姿をした青年が仲良さそうに歩いていれば、また違う方向で誤解を受けることもある。それに比べれば兄妹に間違えられる方がまだマシなのかもしれない。
 実際にシオンはカラーのことを妹のように可愛がっていると、彼らの仲間であるジニアとベルガモットは思っている。自分たちより一回り幼い彼女が、多くの人の希望や羨望を背負いながら役目を果たそうとする姿を目にすれば、誰だって尊敬せざるを得ないだろう。そんな彼女を誰よりも近くで見ていれば、カラーが無理をしないように構わざるを得ないはずだ。それこそ兄妹と勘違いされるほどに。
 ——シオンは知るよしもないだろう。彼のあたまひとつぶんしたで、彼女がどんな表情をしているのか。どんな視線で彼を見上げているのかなど。