19日 鎖の弟

 

Novel

 少年は傀儡だった。創造主に望まれるまま造られただけ。決して主人を裏切らない存在として。己の意志など無く、ただ頷くだけの人形。
 魔女と称される主人に対して自分は使い魔、と呼ばれるものなのだろうか。どうでもいい。ただ彼女の指先に従うだけだ。

 少年は弟になった。姉さんは家族が欲しかったらしい。「あなたの名前はカイよ」彼女はそう告げた。僕に異論はない。
 曰く、弟というものは姉に絶対服従するものらしい。それならば姉弟こそ僕たちに相応しい関係だと言える。弟でも兄でも恋人でも—この話題は姉さんにはタブーだが—彼女が望むのなら、何にでもなろう。

 少年は恋をした。姉さんには言えなかった。だって、彼は、あの子は姉さんが殺したくて殺したくて堪らない相手だったから。酷い裏切りだ。
 彼女だけは裏切ってはいけないと、それだけは固く誓ったはずなのに。それでも僕はもう、主人の命令通り彼を殺すことは出来そうにない。彼女を置いて幸せになろうなんてのもおこがましい。

 それならばいっそと、少年は——