18日 神とは

 

Novel

 神は世界を抱きしめる。その姿はまさに親と子であった。ただそこに愛があるのかは、彼自身もわからないけれど。
 神に親と呼べるものはおらず、それでも万物の祖であった。他の神々も、数多もの世界も、そこに生きる全ての種も、全て己が創造した。忘れようとしても、目を逸らしても、虚空の脳に全てが流れ込んでくる。それが全知全能の神の在り方だった。
 神が神であれば、何事もなく世界は回ったのだろう。ただ彼は寂しさを覚えてしまった。そして創ってしまったのだ。理解者たりえる存在——己の写身を。
 それは神に始まり、人間、天使、魔物と……世界の数ほど創造したが、いくら写身を増やそうと彼等はただの被造物に過ぎないのだ。創造主に望まれただけの傀儡。まだ適当に創った人間や動物の方が無知ゆえの可愛いさがある。自分で創っておいて随分と身勝手な考えだが、神とはそういうものだった。
 それに大半の写身たちは己が何者であるかも知らないだろう。知ってしまった者は運命を—諦めたように—受け入れるが、中には神への復讐心を抱くものもいる。まあ彼女の結末も神は知っているのだけれど。彼はそれが酷く悲しいように思えた。
「なにもみたくないなあ」
 そして神はその両眼を隠した。