10日 誕生日にむけて(moc)
Novel
「もうすぐシオンの誕生日だね!」
みんなは何あげるか決めた? そう元気に切り出したのはベルガモットだ。なんたって十月十六日は我らがリーダーの誕生日なのだから。今から楽しみで仕方ないのだろう。他の面々もいきいきとした様子で話している。
「私はケーキを焼こうと思います!」
「いいね! じゃあわたしも——」
「ベルガモットは当日オレと飾り付け担当な」
ベルガモットがカラーに便乗しようとする前にジニアが遮る。彼女の壊滅的な手料理を食べてはお祝いどころではなくなってしまうためだ。シオンも彼女の料理の腕を理解しているが、プレゼントとして差し出されては拒否せず完食しようとするだろう。シオンのそんなところがみな好ましいと思っているが、当日は心から楽しんでもらいたいのだ。普段は相手を限りなく尊重するカラーも今回ばかりはベルガモットの申し出を断った。
「じゃあ料理はフリージア家の二人に任せるとして、オレたちはプレゼントどうすっかな」
「服とかどう?」
「そもそも物に興味を持たないタイプだからなあアイツ」
「だからこそ! シオンが大切にしたいと思えるものをあげたいの!」
ベルガモットの言う大切なものにジニアは心当たりがあった。シオンがいつも身に付けているバンダナ。たしかアレは彼の妹から貰ったものだったはずだ。十年前に貰ったソレは補修を重ねに重ねてもう元の素材は残っていないかもしれないが、それでもシオンにとってはいつまで経っても“大切なもの”だった。一番付き合いの長いジニアはそれをよく理解している。
「んじゃ当日までに色んな店見に行くか」
「そういえばライラックは何か意見ないの?」
意見がまとまったところで、今まで聞き役に徹していたライラックへと話を振る。彼は少し思慮した後、扉の影から覗く白い影を横目で見ながら機械的に微笑んだ。
「彼なら何をしても喜んでくれると思うので問題ないかと」